秋華賞が僕とスティルの最後の栄光だった。
続くエリザベス女王杯では逆転を許すとその後はセンターに立つことは叶わなかった。
　夏を過ぎてから兆候はあった。
　スティルが自分の中の何かを抑えこもうとしていたのはずっと分かっていた。
本人は隠そうとしていたが彼女のことを誰よりも見てきた僕は気付いていた。
しかし、夏を過ぎてからは目に見えて抑えが効かなくなっていた。
当時、まだ若かった僕にできることは無かった。
その後、スティルが本来の輝きを取り戻すことはなく、
16戦5勝のキャリアでターフを去った。
それでも、僕にとってスティルを担当した3年間は色褪せることは無い。

今の僕がいるのはスティルのおかげだ。

スティルと出会ったからこそ僕は今でもトレーナーを続けている。
彼女と出会っていなければもうとっくにトレーナーを辞めていただろう。
だからこそ、彼女からの問い掛けではなく僕の方から伝えよう。

「いつまでも愛している」